本シリーズについて
全国通訳案内士をもう一度考える
2018年1月の通訳案内士法の改正から約1年。規制の緩和や試験の難易度の上昇など、2018年は既に資格を持っている方にとっても、資格取得を目指す受験生の皆さんにとっても、変化の1年でしたね。
法改正から1年が経とうとしている今だからこそ、今年受験をした方や、これから受験を考えている方と一緒に「全国通訳案内士」という資格について考えていきたいと思いました。
先日のブログでは、第1弾としてNPO日本文化体験交流塾理事長、True Japan School校長の米原亮三氏が、法改正から1年のガイド現場についてお伝えしました。
シリーズ第2弾の今回は、True Japan Schoolが所属するインバウンド専門の旅行会社、True Japan Tour(株)(以下、TJT)のGlobal Sales事業部部長である池田賢次郎氏が、実際のガイディング現場の写真を豊富に用いながらお伝えします。
実績から紐解く!訪日マーケットの特徴とトレンド
みなさん、こんにちは!TJT Global Sales Teamの池田(写真右側)です。
私たちのチームは主に、海外のエージェント向けに営業を行い、世界各地から日本にお越しになるお客様にツアーの提案や提供を行っています。
先日もロンドンで行われたWorld Travel MarketにTrue Japan Tourとして出展し、世界中のエージェントに私たちのツアーを売り込んできました!
World Travel Market Londonの様子
旅行関係者が世界中から集まる会場は
活気に溢れています!
各国がその特色を活かしたブースを構えて
商談を行っています!
日本のブースもありました!
TJTもこの中にブースを設けました!
TJTのお客様層
さて、私たちTJTが対応するお客様はそのほとんどが北米、オーストラリア、または欧州圏のお客様です。 2018年度の売り上げ比率を見ると上位からアメリカ35%、オーストラリアやニュージーランドなどのオセアニア27%、ヨーロッパ諸国16%、中東14%となっています。
こういったお客様の中には、教育レベルや社会的地位の高い人たちも多く含まれています。そのためか、弊社で手配するホテルの価格帯も一泊一室あたり20,000円からそれ以上のクラスが多く、中には各都市で最上級のホテルや旅館を求める方々も珍しくありません。
最近のツアーのトレンド
最近のツアーのトレンドとしては、日本食であったり、また日本にしかない変わったものを見たり・体験したりしたいというリクエストが多くなっているような気がします。
そして日本文化に関心の高いお客様も非常に多く、日本の旅で体験してみたいこととして、伝統的なことから近代的なものに至るまで、日本文化体験をご所望の方が沢山いらっしゃいます。
茶道や着物の着付け、侍体験など伝統的な日本文化体験の人気は引き続き堅調ですが、これらの体験についてはここ数年でかなり広範に普及し、訪日旅行においては一般的なアクティビティーとして定着しました。これらに加え、最近特に目立つのは、食に対する関心の高さとより細分化されたニーズです。
日本食に対する関心と期待値の高さ
寿司やすき焼き、天ぷらといった代表的な和食のジャンルについての人気は言わずもがなですが、最近はラーメンや餃子といったカジュアルな食に対しても興味が高いお客様が非常に多いですね。日本食ブームに世界中で火が付き、私たち日本人が思っている以上に、海外のお客様に対しても日本食は一般的なものになっているのだと感じます。
海外で提供される日本食も、高級なものからファストフードまで今やバラエティーも豊富で質も高いものが多い。だからこそ「日本で食べる日本食」に対するお客様の期待値がとても高いのだということを感じます。
旅行の大きな目的である日本食
日本に来るお客様の中には、日本食全般について豊富な知識をお持ちの方も多く、私たち日本人でさえ知らないようなことをご存知の方もたくさんいらっしゃいます。経済的に余裕のあるお客様の場合は、ミシュランに掲載される高級寿司店や鉄板焼きレストランの予約をオーダーされることも珍しくありません。
高級店以外でも、うどんやそば、トンカツ、カレーなども広く知られるようになり、和食の一ジャンルとして、すでに世界各地で市民権を獲始めているようです。とにかく、食が訪日旅行の大きな目的の一つになっている事を私たちは日々感じています。
ますます関心の高まる日本のポップカルチャー
食以外のトレンドについて言えば、日本のポップカルチャーやサブカルチャーについても高い関心が伺えます。
最近のトレンドは、アニマルカフェやTeamlabのデジタルミュージアムなど、ユニークなカルチャーや最先端の技術を使ったアトラクションなども大変人気です。
SNS発信も旅の大きな目的の一つ!
加えてこれはインバウンド市場全体についても言えることだと思いますが、インスタグラムなどの写真を使ったSNS発信が訪日旅行の大きな目的となっていることを感じます。
「インスタ映え」という言葉があるように、いかにインパクトのある写真や映像を撮影してSNSにあげるかということが、旅の大きな目的の一つになっていると言えるでしょう。
目まぐるしい変化への柔軟な対応力が不可欠!
上記で挙げた食やその他ニーズに関する傾向を紐解き、4~5年前と比較すると以下の2点が分かります。
- インターネットを通じて情報の拡散がよりスピーディーになった
- リピーターの増加によって、かつてより広範囲かつニッチなテーマに人々の関心がシフトしている
社会全体もそうですが、私達こそが目まぐるしい変化に常に目を配らせ、柔軟に進化し続けていくことが重要だと感じています。
新しいトレンドの中で、全国通訳案内士に「今」求められる3つのPoint!
それでは、昨今のトレンドを踏まえたとき、全国通訳案内士には何が求められているのでしょうか。私たちは、以下の3つのPointが重要だと考えます。
Point1▶ 細分化されたニーズへの柔軟な対応力
ニーズが細分化し、よりニッチなことにお客様の関心がシフトしていることを考えると、ゲストを受け入れる側にも、より細分化されたニーズへの柔軟な対応が求められます。 外国人観光客のすべてのニーズを把握することは難しいですが、ガイドにとって大切なのは…
普段からアンテナを張って新旧の文物についての情報収拾を怠らないこと
Point2▶ 想定外のリクエストに対する柔軟な対応力
それに加えて現場では、お客様から予想もしなかったようなリクエストされることもあります。そんな時に大切なのは…
- そのリクエストに対応してお客さんに満足していただくこと
- それに対しての労を厭わないこと
特に富裕層のお客様のアテンドをする際は、その日の気分でリクエストが変わりスケジュールの変更が必要になることは日常茶飯事です。
何を言われても笑顔で対応し行動できる、そのようなガイドであればファンが増え活躍の場も増えていくことでしょう。
Point3▶自分自身のストーリーを語れる力
またガイドに求められる資質として、「ストーリーを語れるガイドである」ということがあると思います。
語学力や知識はガイドに求められる資質の重要な項目ではありますが、私たちがお相手するお客様の中には、歴史上の細かいことなどには特に興味の無い人たちも多いです。
一般的にお客様が興味を持つのは細かな学術的な知識というよりは、日本人がどのように生活しているのか、日本人が何を感じているのかなど、等身大の日本人の姿なのだと思います。
何気ない日常のこと、日本人の人生について、何を食べ、何を思い一日を終えるか。私たちが普段意識していない何気ない日本の生活の話が、外国から来たお客様にとっては思いがけないストーリーとして映ることがあります。
自分の人生談、家族のことなど、パーソナルなストーリーは千者千様で、他の誰も語ることができないユニークなコンテンツです。
自分のとっておきのストーリーを旅の要所で語ると、思いも掛けない形でお客様は喜んでくれるでしょう。
さらに、そういったパーソナルなストーリーを、ジェネラルなトピックや歴史等と合わせて上手に語ることができれば、より高い満足をお客様に提供できることでしょう。自分のとっておきのストーリーをたくさん用意して、それらを巧みにお客様に披露してあげてください。
以上、最近のインバウンド旅行のトレンドとガイドに求められる資質についてでした!
次回、シリーズ第3弾はTrue Japan Tour(株)でガイド派遣を担当している部署から、ガイド派遣の実際についてお伝え致します!乞うご期待!!
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日本最大の通訳案内士団体「日本文化体験交流塾」のご紹介
- NPO日本文化体験交流塾(以下、IJCEE)は会員数1,724名(2018年12月22日現在)を擁する日本最大の通訳案内士団体です。
- 1,724名の会員様のうち、1,500名以上が全国通訳案内士の資格をお持ちです。
- 全国通訳案内士の資格を持っていなくても、「外国のお客様に日本の文化を広めたい!」という志があり、私たちの理念「日本文化の継承・発展・創造」に共感して下さる多くの方が会員様として活躍されています。
- IJCEEは特定非営利活動法人として東京都に正式に登録をしています。
- IJCEEは2018年12月に創立10周年を迎えました。
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