本シリーズについて
全国通訳案内士をもう一度考える
2018年1月の通訳案内士法の改正から約1年。規制の緩和や試験の難易度の上昇など、2018年は既に資格を持っている方にとっても、資格取得を目指す受験生の皆さんにとっても、変化の1年でしたね。
法改正から1年が経とうとしている今だからこそ、今年受験をした方や、これから受験を考えている方と一緒に「全国通訳案内士」という資格について考えていきたいと思います。
通訳案内士は本当に仕事が無いのか
みなさん、こんにちは!
第3回目に引き続き、今回もTJT Experience Management課の高木がお伝えします!
巷では、「通訳案内士は資格を取っても仕事が無い」とよく言われますが、本当にそうでしょうか。シリーズ第4回目の今回は、通訳案内士の仕事の現状を踏まえTrue Japan Tour(株)(以下、TJT)としての画期的な取り組み、TJT認定ガイド制度についてご紹介します。
通訳案内士の就業実態について(官公庁の資料から)
みなさん、観光庁が2014年に「通訳案内士の就業実態等について」という調査を行ったのをご存知ですか?
通訳案内士の就業状況や年収等が報告された生々しい資料で、当時とてもセンセーショナルに報道されました。
5年前の資料にはなるのですが、公的に通訳案内士の就業状況について調査された唯一の資料ですので、ここではその一部をご紹介しながら通訳案内士の就業実態について考えていきます。
5年前のガイドの実状をまとめると…
(出典:観光庁「通訳案内士の就業実態等について」を基に作成)
- 4分の3が未就業!
- 過半数が年収は200万円以下
- 業務の受注は旅行会社やガイド団体などが主
当時は4分の3が未就業!
資格を持っているガイドさんは一体どれ位の人がガイド業務に就いているのでしょうか。
回答のあった6,441名のガイドさんのうち、なんとその4分の3のガイドさんが「未就業」と回答しました。
就業と回答したガイドさんの中でも「専業」と回答されたのは、わずか6.2%です。
未就業の理由
その未就業のガイドさん達に、なぜガイド業務に就かないのかを聞きました。
その結果、50%近くのガイドさんが「一定の収入が見込まれないため」と回答しました。
通訳案内士の年収はどれくらいか
通訳案内士になると、どれくらいの年収が見込まれるのでしょうか。
5年前の調査では、就業しているガイドさんのうち実に50%以上の方が残念ながら年収は200万円以下と回答しました。
就業しているガイドさんの業務受注方法
それでは、就業しているガイドさんはどのようにガイド業務を受注しているのでしょうか。
調査によると、通訳案内業務の主な受注方法としては、旅行会社や通訳案内士団体、派遣会社からの紹介によるものが多いようです。
2019年現在、状況は改善されているのか?
今ご案内した資料は随分と暗い内容でしたね。でもご安心ください!あくまで5年前のデータです。それでは2019年現在で状況はどれ位改善されているのでしょうか。
残念ながらこの調査以降には公的な調査が行われていませんが、皆さんもご存知の通り、現在日本のインバウンド業界が大変な盛り上がりを見せていることは事実です。この状況下でガイドさんへの待遇は5年前に比べると改善されつつあるものの、依然として季節による需要のばらつきがあったり、そもそものガイド料金の設定が低かったりと、まだまだ職業として自立するには厳しい面があります。
しかし、インバウンドは今後の日本を支えていく重要な産業であり、全国通訳案内士はその要とも言える存在です。その全国通訳案内士の地位向上に向けて、実力のあるガイドさんがきちんと報われる制度が必要だと、私たちTJTは考えています。
TJTでの業務提供状況は!?
それでは私たちTJTにおけるガイドさんへの業務提供状況はどうなのでしょうか。
インバウンドが盛り上がりを見せる状況下での私たちの状況と取り組みについてご紹介します。
2014年から業績は毎年拡大!
私たちTJTは2014年にガイド派遣業務をスタートしましたが、それ以来業績は毎年拡大傾向にあり、母団体であるIJCEE会員の方に安定的にガイド業務を供給できる体制が整ってきました。
TJTのこれまでの歩みをざっくりと
-
2014年
True Japan Tour株式会社設立
- TJTがガイド派遣業務をスタート
- G Adventures*へのガイド派遣を開始
-
2017年
ガイドのアサイン数が安定して成長
- 年間4,000人のガイドアサインを行う
- Grand Circle Corporation*へのガイド派遣を開始
-
2018年
ガイドアサイン依頼数の急激な増加・業務拡大
- ガイドアサイン日数は40%~50%に増加する勢いで推移
- HISへのスルーガイド*派遣を開始
G Adventures*…カナダを拠点として世界中でツアーを行っている旅行会社。日本には3種類のコースがあり9日間~14日間で回る。
Grand Circle Corporation*…アメリカ最大の直販旅行会社。アメリカの50歳以上の旅行者をターゲットに海外旅行を提供している。
スルーガイド*…お客様の日本到着地から日本出発地までツアーをご案内する。通常は最低でも1週間程度は添乗するイメージ。
業務拡大の裏でこんな悩みも…
インバウンド業界の発展に伴い、エージェントやお客様からはより質の高いガイドへのニーズも高まってきています。
その中でTJTも業績を拡大しガイド派遣数を増やしてきたのですが、信頼のおけるスキルの高いガイドさんの不足に悩まされる状況に陥るうちにこんなことを考えるようになりました。
質の高いガイドを安定して確保したい!そのためには…
- 繁忙期に質の高いガイドさんに対して、業務保証と所得保証をする制度を作ろう!
- IJCEE会員の中で認定試験を行い、TJT認定ガイドになってもらおう!
かくして「TJT認定ガイド制度」が設立されたのです!
TJT認定ガイドになるとどうなるの??
では、この画期的なTJT認定ガイド制度、認定ガイドに選ばれるとどうなるのでしょうか?概要をご紹介します。
TJT認定ガイドの骨子
- 既に質の高いガイドさんを選定し、TJT認定ガイドとして高い謝金水準での業務量を保証しよう
- 素質のあるガイドさんのポテンシャルを認めて、レベルにあった業務に集中的に対応してもらうことで、確実にガイド技量を高めてもらおう
注目!TJT認定ガイドの待遇の詳細を公開!
TJT認定ガイドに選出されると、TJTから以下5点の待遇が約束されます。
1. 水準の高い基本日当 |
通常のガイド謝金の水準より高い基本日当が適用される
|
---|---|
2. 業務保証と所得保証 |
【A認定ガイド】
【準A認定ガイド】
|
3. 交通費と宿泊費の支給 |
|
4. 通信費の支給 |
|
5. 食事手当の支給 |
|
全国通訳案内士の地位向上にも繋がるTJT認定ガイド制度
ところで、既にご存知の方も多いように、私たちTJTの母団体は日本最大の通訳案内士団体であるIJCEEです。このIJCEEは団体の理念として「全国通訳案内士の地位の向上を目指す」を掲げています。そして、その地位向上のために必要なのは以下の3点であると考えます。
- ガイドさんに対する業務機会の拡大
- 安定的な業務の供給
- 謝金水準の改善
これら3つを満たすのが私たちTJTの「TJT認定ガイド制度」だといえます。つまり、TJT認定ガイド制度は全国通訳案内士の地位向上にも貢献し得る、画期的な制度だといえます!
誰がTJT認定ガイドになれるのか?
この画期的な認定ガイド制度ですが、それでは一体どんな人が認定されるのでしょうか?
TJTの選考を通過する必要がある
TJT認定ガイドになるためには、TJTの行う選考を通過する必要があります。
ただし選考へは誰でもがチャレンジできるわけではなく、規定の応募資格要件を満たす必要があります。
意外と手が届きそうな応募資格
「規定の応募資格要件」と聞くと、とても厳しくレベルの高い内容を想像する方が多いかもしれませんね。
(例えば、年間ガイド日数200日以上!など…)
しかし実は、TJT認定ガイド制度の応募資格は、決してそんな目も眩む程難しいものではないのです。認定ガイドの選考にチャレンジするための要件は以下の通りです。
1. 必須要件 |
|
---|---|
2. 実績要件 |
|
3. 能力要件 |
|
いかがでしょうか?意外と手が届きそうだと思いませんでした??
〔必須要件〕については、これから皆さんTrue Japan Schoolで試験合格に向けてお勉強をして合格を勝ち取るので問題無いですね。注目すべきは〔実績要件〕です!
~日本人に対する添乗実績は1日0.5日と見なし、20日を上限に加算が可能~
True Japan Schoolでは常日頃から皆さんに対して、旅程管理主任者の資格を早めに取得して、日本人のバスツアーで添乗員としての経験を積むことを勧めていると聞いています。
その日本人に対する添乗経験は最大で40日分(×0.5で20日分換算)まで加算ができます。
そしてその日本人に対する添乗業務には、通訳案内士試験の合格前でも就くことが可能ですね。
あとは合格してから、外国人への有料ガイド経験をのべ10日積めば、実績要件はクリアです!
残すは能力要件ですが、このプレゼンテーション研修は試験合格後すぐに行われるIJCEEの新人研修で受講が可能です。
「仕事を取れるトップガイド」への初めの一歩は意外と手の届くところにあるのです!
TJT認定ガイド第1号はTrue Japan Schoolの卒業生!
ちなみに、2018年の第1回の選考を見事通過し、晴れてA認定ガイド第1号になったのは、喜ばしいことにTrue Japan Schoolの卒業生、つまり皆さんの先輩なのです!
そのガイドさんは、True Japan Schoolの講座を1次試験対策から2次試験対策まできっちり受講され、2016年に資格取得してガイドデビューされました。そして新人研修をはじめとするIJCEEの各種研修で知識やガイドスキルを研鑽し続けながら、着実に実績を積むことで実力を付けていかれた方です。
次はあなたの番です!
そして次のA認定ガイドは、今このブログを読んでいるあなたかもしれません!TJTは2019年更なる飛躍をします。
新たなチャレンジとして200平米の文化体験施設 "True Experience Studio(仮称・図)" も開設しました。この新施設ではこれから、毎日、寿司づくり体験や折り紙体験などの日本文化体験プログラムを開催する予定ですし、通常のガイド業務もこれからどんどん増やしていきます。
つまり、私たちTJTには皆さんが必要なのです!
TJTはTrue Japan Schoolでしっかりと学び、試験を合格された皆さんがガイドデビューし、私たちと一緒にお仕事ができる、そんな日を今から心待ちにしています。ですから、今は試験勉強で大変かもしれませんが、それは皆さんの将来に確実に繋がる大切な第一歩なので、頑張ってくださいね。皆さん、お待ちしていますよ!
いかがでしたか?
インバウンドの現場から!TJT認定ガイド制度についてでした。
次回のシリーズ第5弾は、いよいよ合格したガイドさん達がどうやってガイド技術の維持・向上を行っているかに迫ります!乞うご期待!
人気シリーズのバックナンバーはこちらから
日本最大の通訳案内士団体「日本文化体験交流塾」のご紹介
- NPO日本文化体験交流塾(以下、IJCEE)は会員数1,724名(2018年12月22日現在)を擁する日本最大の通訳案内士団体です。
- 1,724名の会員様のうち、1,500名以上が全国通訳案内士の資格をお持ちです。
- 全国通訳案内士の資格を持っていなくても、「外国のお客様に日本の文化を広めたい!」という志があり、私たちの理念「日本文化の継承・発展・創造」に共感して下さる多くの方が会員様として活躍されています。
- IJCEEは特定非営利活動法人として東京都に正式に登録をしています。
- IJCEEは2018年12月に創立10周年を迎えました。
コメントをお書きください
早川 礼二 (火曜日, 15 1月 2019 22:18)
内容が非常に具体的で現実味があるので、明確に理解できる。
松野 良一(会員) (水曜日, 16 1月 2019 07:34)
良い制度だと思います。
「認定ガイド資格」は要件を満たせば、自動的に取得できるのか、又は要件満たした後、特別の申請、または資格認定審査があるのですか?
(私の場合、TJT~頂いた有料ガイド日数飲み、未達です。(他団体案件を入れれば10日以上)
細谷 浩平 (水曜日, 16 1月 2019 12:54)
他の通訳団体では、先輩ガイドが多いせいと思いますが、A級になるには、最低3年の経験、年間ガイド180日以上等の条件があるのに比べ、IJCEEでは新人でも能力次第では、最低ガイド30日のガイドで、上級となる近道がある、しかも一定のアサイン保証というインセンティブまであるのは魅力です。